境界をさがせ!! おせっかい士(ざむらい)の流儀 担当:熊本県青年司法書士会
■開催趣旨
本研修会と同じタイミング、同じ熊本の地で青年土地家屋調査士の全国大会が開催されます!本分科会は、この運命の巡り会わせに感動した青年司法書士と青年土地家屋調査士が、手と手を取り合い、作り上げました。
司法書士と土地家屋調査士は不動産登記のプロです。土地家屋調査士が「権利の明確化」を目的として表題に関する登記を行い、司法書士が「権利の保護」を目的として権利に関する登記や訴訟を行っています。同じ不動産登記を扱う士業でももちろん仕事が異なります。さらに視点が違います。この2士業で同じ研修を受けることにより、相互の分野に対する知識を習得するのみでなく、その視点を実感し実務に活かしていきませんか。
この研修では、テーマのとおり境界問題について、基本的な知識から筆界特定や境界確定訴訟、所有権確認訴訟といったその解決法についての理解を深め、それぞれの観点から時効取得と登記を考察するなど深く追求していきます。さらに、境界問題を皮切りに、視野を広げ現在起こっている不動産の所有者不明問題や公道に残る個人名の問題等の社会問題まで迫る予定です。不動産登記のプロである司法書士と土地家屋調査士がお互いを知り、協力することによりこれらの問題の解決を目指します。
■研修内容
講義・事例検討を中心に行います。
※本分科会は、土地家屋調査士との合同の分科会です。開催時間が次のとおりとなります。お間違えないようご注意ください。 開始時刻:15時50分 終了時刻:18時20分
※この内容は一部変更される可能性がありますので、ご了解ください。
在留外国人のリーガルニーズに応える神奈川の流儀 担当:神奈川青年司法書士協議会
■開催趣旨
2020年東京オリンピックを控えた日本、そして今後少子高齢化が見込まれる日本経済にとって、国内経済の発展に寄与する外国人の受け入れを促進しようという政府の方針もあり、在留外国人との関わりはより一層深まっていくと考えられます。
現在日本で生活する在留外国人の数は、2,086,603人で、うち神奈川県は168,189人と全国で3番目に多い地域です。(2014年6月法務省統計)
そういった地域柄もあり、神奈川青年司法書士協議会では、昨年から在留外国人の法律相談に取り組み始めました。その中で、特に生活や暮らしの相談については、在留外国人は日本人と同じ法律的問題を抱えながら、言葉や在留資格の問題などから、日本の法的支援を受けづらい状況にあり、どこに何を相談したらいいのかわからず、途方に暮れているケースもあることが分かってきました。例えば日本人の配偶者からのDVにより離婚したいけれど、子供もいるので日本で生活を続けたいから我慢している、どうしたらいいかといったものや、言葉の問題や偏見からくる不動産の賃貸借契約に関するトラブルなどです。
それでは、なぜ私たち司法書士は、在留外国人の支援に取り組まなければならないのでしょうか?そもそも日本国憲法によって、在留外国人にも原則として基本的人権は保障されています。にもかかわらず、外国人だからという理由だけで先述したような不利益を被ったり、その基本的人権が侵害されるような事態が生じていることがあります。在留外国人も個人として尊重されるべき権利を享有する一市民です。これまで、市民に近い法律家として活動してきた私たち司法書士が、このような事態を見過ごして良いものでしょうか。だからこそ、私たちは、彼らを差別することなく、専門家としての知識、経験を駆使して支援する必要があると考えています(実際、在留外国人の支援を行っている民間団体からのニーズも高まっています)。そしてそのためには、よりスキルを磨く必要があります。
また、在留外国人の中には来日前に日本よりも厳しい生存競争の現実に曝される経済社会を生きてきた人々も少なくありません。戦争・内戦・クーデター・圧政などによる政治的混乱の中で家族や親しい人を失った経験を乗り越えて生きてきた人もいます。生きてきた背景が異なると、私たちがこれまで関わってきた日本人の相談者とは、ものの見方や考え方が異なる場合もあります。
だからこそ、そういった日本で生活する在留外国人が抱える法律問題にも「気づき」、これまで司法書士が積極的には関わることが少なかった外国人からの相談にも躊躇することなく関わり支援するこれからの司法書士像を提案し、活動の場を広げ、受任事件数を増やすことができることを知っていただきたいと思います。
たくさんのご参加お待ちしております。
■研修内容
実際に在留外国人から相談を受けた場合、どういった知識が必要となるのか、在留資格等について学び、さらに現在神奈川で行っている相談事業から事例紹介を行い現在の状況を共有していただき、外国人の少ない地域等で今まで在留外国人との接点がなかった方にも今後在留外国人の相談業務に取り組むきっかけとなる分科会を行います。
第1部 | ・在留外国人の現状及び司法書士が関わる必要性について |
第2部 | ・司法書士に必要となる在留資格の知識 |
第3部 | ・相談から受任事例紹介 |
・質疑応答 |
尚、内容は今後の動向、研究成果により一部変更する場合がありますので、予めご了承願います。
SOSを見逃すな! 家族にかかわる私たちの流儀
〜児童虐待の現場で何が起こっているのか〜
担当:全国青年司法書士協議会 人権擁護委員会
平成22年夏、大阪のあるワンルームマンションで3歳と1歳9カ月の幼いきょうだいが変わり果てた姿で発見された。子どもたちは、部屋に堆積したゴミの中で服を脱ぎ、亡くなっていた。母親は風俗店に勤務する20代の女性。子どもを部屋に置き去りにしたまま、男性宅を転々とし、そして自分の「盛った」生活をSNSで紹介していた。そして、彼女は事件のほんの数年前までは、育児を真面目にこなし周囲の評価も高い「いい母親」であった。
大阪二児置き去り死事件―。この事件で母親に科されたのは懲役30年。児童虐待事件としては当時異例の判決であった。この母子にいったい何が起こっていたのだろうか。
本分科会では、事件の経緯を追いかけ、母親の幼少期からの人生をたどり、長年にわたりこの事件を取材してきたフリーランスライターの杉山春さんをお招きし、行政、職場、友達、そして家族にさえも助けを求めることができなかった母親の実情を紐解いていく。
また、事件をとおして児童虐待の本質・実態を学ぶとともに、その起因となる現代の母親の子育て事情や女性・子どもの社会的孤立、そして、孤立が引き起こす貧困問題についても検討していく。
現代の日本社会では、子育てを母親の責任にする風潮や離婚、未婚その他様々な偏見により多くの母親が育児に対してプレッシャーや孤独を感じているといえよう。子どもが将来に希望を持つことのできるような満足な養育環境を得るためには、これらのことを改善していかなくてはならない。しかし、このような親たちは、貧困や孤立によって、自ら主張する力、助けを求める力を奪われている。
これらの問題に私たち司法書士が関わり、彼女らの代弁者となるべきということもあわせて提案していく。
普段出会う人々と何も変わらない、決して特別な存在ではない彼女たちを目の前にしたとき、私たちは彼女たちが微かに発しているそのSOSを見逃すことなく感じることができるのだろうか。
第1部 | 講演「大阪二児置き去り死事件」からみる現代日本の実態(仮) |
講 師 | 杉山 春 氏 |
講師略歴 | 1958年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。雑誌編集者を経て、現在、フリーランスライター。困難を抱える家庭の支援などに携わった経験を持ち、所在不明児童問題にも関わる。児童虐待、貧困問題、ひきこもり、外国に連なる子どもたちなどに関心を寄せている。著書に、本事件を取り扱った『ルポ虐待 大阪二児置き去り死事件』(ちくま新書)をはじめ、『移民環流』『満州女塾』(新潮社)、『ネグレクト 育児放棄―真奈ちゃんはなぜ死んだか―』(小学館。第11回小学館ノンフィクション大賞受賞作)などがある。 |
第2部 | 司法書士が考える児童虐待との関わり方(仮) 私たち司法書士の相談現場で、その微かなSOSのサインを察知し、支援していくためには何が必要なのか。行政の対応、また、施策にも触れ、これらのことを検討する。 |
第3部 | 意見交換・質疑 |
魂(マブイ)の探究(続々編)
〜オキナワとヤマトの流儀〜
担当:沖縄県司法書士青年の会
■開催趣旨
昨年の全国おきなわ全国大会、ふくおか全国研修会の分科会に続き、今回で3度目のテーマとなります。
今年は、戦後70年の節目の年です。沖縄では悲惨な地上戦により住民の4人に1人が犠牲となりました。戦後27年間は米軍占領統治下に置かれ、日本国憲法は適用されませんでした。本土復帰から43年を経た今も、米軍基地あるが故の事件や事故に苦しみ続けています。その米軍基地も銃剣とブルドーザーで土地を強制接収されたものであり、これは占領下においても所有財産の没収を禁じたハーグ陸戦法規に明白に違反するものです。
昨年の名護市長選挙、名護市議選挙、沖縄県知事選挙、衆議院選挙のすべてで、米軍普天間基地移設に伴う名護市辺野古への新基地建設反対の圧倒的民意が示されました。
ところが、政府は前知事が公約を翻し行った公有水面埋立承認を盾に、民意を無視し辺野古新基地建設を「粛々」と強行しています。
現場で抵抗する市民に対しては、海上保安庁や沖縄防衛局による過剰警備によって市民を押さえつけています。また、4月28日、沖縄にとって屈辱の日(サンフランシスコ講和条約により切り離された日)には、日米首脳会談において辺野古新基地建設推進を再確認しています。
こうした日米両政府の姿勢は、「自治は神話だ」と言い放った米軍占領統治下の圧政と何ら変わりません。沖縄の民意を無視し、民主主義の根幹を破壊する暴挙であるとの声が高まっています。これは「沖縄問題」ではありません。この国の民主主義の在り方を問うている問題です。
沖縄の面積は日本領土の0.6%にもかかわらず米軍基地の74%は沖縄にあります。この数字が示す意味は本土に向けた「不平等」、「植民地扱い」に対する問題でもあります。「平和憲法は、沖縄には来たことがない」という表現がありますが、憲法9条と沖縄の基地(日米安保)はコインの表裏のようにひとつのシステムとなって日本は平和と経済発展を手にしてきました。集団的自衛権の解釈改憲や憲法改正が現実味をおびてきたなか、沖縄の「これ以上基地を押し付けないでくれ」という切実な声は、本当に届いているのでしょうか。今こそヤマトの流儀が試されているともいえます。
この分科会では「要石:沖縄と憲法9条」「憲法は政府に対する命令である」「経済成長がなければ私たちは豊かになれないのだろうか」など多数執筆し、現在沖縄を拠点に精力的に発信を行っているC・ダグラス・ラミスさん(政治思想史)をお招きし、お話を伺い、憲法、民主主義の視点から、沖縄から向けられた眼差しにどう向き合うか、を考え議論を深めていきます。
ファシリテーターの「流儀」 担当:全国青年司法書士協議会 ADR委員会
■開催趣旨及び研修内容
みなさんは「ファシリテーター」という言葉をお聞きになったことはありますか?「facilitate」とは、「促進する」「容易にする」という意味の英語で、ファシリテーションとは、会議をはじめ様々なコミュニケーションが必要とされる場面で、対話や体験を通して「気づき」を促す手法です。そのリーダーであるファシリテーターのスキルは、近年わが国でも最新のリーダースキルとして注目されています。ファシリテーターの最大の役割は、ある目的を持った人々の活動が最も効果的になるように、中立的な立場でグループ(集団)の進むべきプロセスを管理、また時には介入することで、グループの持つ力を最大限に引き出すことです。われわれ全青司ADR委員会が手がけるメディエーションは、このファシリテーションスキルを駆使して当事者に「気づき」を促し、協同や合意を促進します。
司法書士はその執務の中で「ファシリテーター的」な役割を求められることが少なくありません。例えば、後見業務ならば、後見人として関係者の間を取り持って、それぞれの持てる能力を最大限に発揮していただくことにより、被後見人の生活環境を向上させるという成果(アウトプット)が得られます。立会業務においても、売主、買主、それぞれの立場・思惑がある中で、「円滑な取引」という目的を果たすため、調整役に回ることがしばしばでしょう。
そこで、当分科会では、そのような役割を果たすファシリテーターの“心持ち”、すなわち「流儀」について、様々なワークや講義を通して共に学びたいと思います。司法書士に求められる「ファシリテーター的」能力を身につけるということ、それは自身の潜在能力に「気づき」、司法書士が中立的な立場で社会に関わる能力・資質があるということに「気づく」。これらは、突き詰めれば自分自身としっかり向き合うことで、自分自身のありように「気づく」ことにほかなりません。
我々司法書士は、その執務を行う上で、様々な修羅場に遭遇します。どんな時にも平衡感覚を失わずに「今、ここで」起きている現実だけに集中し、自分が果たすべき役割を認識することで、立場の違いを超えてみんなが努力し、悩んでいるということにあらためて「気づく」。いわば「共感力」を培っていくことで、真に市民に信頼される司法書士になれるのではないかと考えます。
当日の研修内容は、基本的に参加型のワークショップとなります。ワークをとおして、自分自身の持つこれまで意識していなかった側面に気付いたり、時には自身の心の内面に否応なしに向き合わざるを得ない場面も出てくるかもしれません。そのような「自己」を勇気を出して受け入れることにより、他人の感情に対してもオープンになれる。ファシリテーターとしての成長はその繰り返しです。皆さんと一緒に我々も成長できれば、こんなに嬉しいことはありません。
仕事も家庭もHAPPYに! それが私たちの流儀! 担当:熊本県青年司法書士会
■開催趣旨
「仕事を続けながら子育てを楽しみたい!」現在子育て中の方、これから出産を控えている方、またそのパートナーの方ならば、そう思うのではないでしょうか。
しかしながら、実際には結婚すると職場をやめざるを得ない、出産したあとも二人目、三人目と育休を取りづらい、男性が育休をとると実質昇進の妨げになるなど、男女ともに仕事と育児の両立が実現できない状況が数多く存在します。それらの背景には、少人数長時間労働で賄われている社会経済の状況や慢性的な保育所不足、家事は女性がすべきといった無意識に刷り込まれた役割意識など、様々な要因が複雑に入りくんでいます。
司法書士も例外ではありません。特に独立開業している場合は、産休中の事務所経営をどうするか、出産予定の司法書士を雇用している場合は産休育休期間中の穴をどうやって埋めるかなど様々な悩みを抱えています。せっかく資格を取ったものの、出産を機に司法書士を続けていくことができなくなったという話もあり、非常に残念でなりません。
本分科会では、基調講演でもご講演いただいた竹信三恵子先生に再度登壇いただき、子育て世代の生きづらさの要因とその改善に向けて提言を頂きます。また、父親母親司法書士から見た、社会の中で子育てをするうえでの生きづらさに対する気づきを述べてもらいます。同時に、資料として様々な司法書士の働き方別の体験手記を提供し、これから出産育児を控える方々の参考にしていただきたいと考えています。後半はグループディスカッションを行い、仕事と家庭の両立に関する不安・課題・改善方法、社会への提言など、参加者の皆様に話し合っていただきたいと考えています。
市民のために活動する司法書士であり続けるために、仕事も家庭もHAPPYにするために、今一度いっしょに考えてみませんか。
■研修内容
第1部 | 講演会(講師 竹信三恵子先生) 子育て世代が抱える生きづらさ~どうすれば仕事と家庭を両立できるか~(仮) |
第2部 | 当事者報告 |
第3部 | グループディスカッション |
※講義内容は一部変更になる可能性があります。
相続未登記問題に立ち向かえ!旧法相続から見る司法書士の流儀 担当:全国青年司法書士協議会 登記・法務研究委員会
■開催趣旨
「登記簿上の地権者2,400人のうち半数が不明」
明治時代以降、登記が更新されていない土地も数多く存在 (2015年 4月 5日 茨城新聞)
「所有者不明の土地 地方で増加」 (2014年 7月25日 読売新聞)
「150年以上相続されていない土地あり、相続人調査に時間がかかる。」 (2013年 7月11日 読売新聞)
これらは、いわゆる相続未登記問題についての新聞記事です。この問題は、東日本大震災の復興に際し、用地買収の壁として立ちはだかりクローズアップされるようになりましたが、東北地方に限られたことではなく、日本全国に存在する問題と言っても過言ではないでしょう。この問題を放置すれば、国土が不明化・死蔵化し、ひいては日本の経済的損失、国力の低下につながっていきます。
そして、実際に、業務としてこのような問題に直面した際に、身に着けておく必要があるのが、旧民法等に規定された相続(以下、旧法相続といいます)に関する知識です。相続の専門家たる私たちは、旧法相続に関する問題を抱えた依頼者に対して、すぐさま的確な方向性を示せるでしょうか?
「コストがかかりますよ。」「難しいですね。」間違ってはいませんが、依頼者の声に耳を傾け解決に導くという点では「×」と言わざるを得ません。
旧法相続に関する依頼は、困難な場面に遭遇することも多いでしょう。時に断念したくなることもあるかもしれません。しかし、そのような場面にも真正面から向き合い、解決していくことが私たち司法書士の流儀であると信じています。
依頼者が、あなたのご家族が、地域が、自治体が、そして日本全体が直面している相続未登記問題。旧法相続に関する知識を身につけて、この問題に一緒に立ち向かいましょう。皆様のご参加をお待ちしております。
(参考文献:東京財団(2014)国土の不明化・死蔵化の危機~失われる国土Ⅲ~)
■研修内容
①相続未登記問題の現状 |
②旧法相続の登記実務及び事例紹介(寸劇も入る予定) |
※この内容は、一部変更される可能性がありますので、ご了承ください。
不動産登記制度から考える司法書士の流儀
〜マイナンバーによって実務はどう変わる!?〜
担当:全国青年司法書士協議会 司法・司法書士制度等研究対策委員会
■開催趣旨
登記業務は、司法書士の基幹業務であり、日本国内において司法書士より専門性を有する者は他には存在しません。また、司法書士は登記制度に関して、改善や提言をするといった場合においても登記の専門家としての役割を求められています。司法書士が関与することにより、取引の安全性や登記制度の信頼性をより高めていくことができます。
では社会における登記の役割とは何でしょうか?目指すべき登記制度の姿とはどんなものなのでしょうか?目指すべき登記制度の姿を探るには、まず、過去から学ぶ必要があります。過去から学ぶこと、すなわち先人たちの行ってきた制度論を学び、そしてまた我々が制度について議論することが青年司法書士の「流儀」だと当委員会は考えます。
不動産登記制度の歴史、そしてこれに関わってきた司法書士の歴史等これまでの不動産登記制度を巡る議論を研究し、振り返ることによって、登記制度の原点・本来的機能を再確認することができます。
過去を振り返ったら今度は未来に目を向けていきましょう。今年からいわゆるマイナンバー制度が導入されます。マイナンバー制度の導入は、今後の登記制度、ひいては司法書士登記業務に影響を与えることも十分に考えられます。名変登記の必要は無くなる可能性もあり、もっと大きく言ってしまえば、保存登記・抹消登記といった定型的な登記は時代が進めばそのうちに誰もが自分で手続きができる時代になるのかもしれません。マイナンバー制度によってどのように社会が変化し、司法書士の実務はどのように変わっていくのでしょうか。そして、社会の変化に伴いニーズの変化も予想されます。我々司法書士も制度の危機に瀕する可能性もないとは言えません。皆さんで考えていきましょう。
■研修内容
・不動産登記制度論の振り返り |
・マイナンバー制度についての研究報告 |
・上記を踏まえてのグループディスカッション又はパネルディスカッション |
※上記を予定しておりますが、今後の研究成果により一部変更する場合がございます。予めご了承下さい。
消費者取引被害救済のための司法書士の流儀
〜被害回復を実現するための責任追及と法のあり方とは〜
担当:全国青年司法書士協議会 生活再建支援推進委員会 福岡県青年司法書士協議会
■開催趣旨
昨今、全国の消費生活センター等に寄せられた消費生活相談は、年間90万件を超え、高止まりの傾向にあります。相談が寄せられて被害が顕在化した事例が氷山の一角だとすると、相当多数の消費者取引被害が発生していることは想像に難くありません。消費者庁の推計によると、2014年における悪徳商法や誇大広告による消費者被害額は6兆7千億円に上り、国内総生産(GDP)の1%を占めとされています。
消費者取引事件の解決には、特定商取引法・割賦販売法・消費者契約法など特別法の知識の取得が不可欠ですが、実際の事件においては、これらの法律のみでは被害回復にたどり着けないというケースは少なくありません。インターネットの普及によるクレジットカード取引の拡大や新たな決済手段の普及に法規制が追い付いておらず、法の不備につけ込んだ悪質業者のやり得を許しているのが現状です。特別法を適用できないケースにおいては、民法等の一般法を駆使することになりますが、主張立証の難解さ等の問題は少なくありません。
しかし、簡裁代理権や書類作成業務を通じて被害回復の役割を担っていくべき我々司法書士は、このような困難事案においてこそ、その役割を求められているのであり、いかなる法律でいかなる責任追及が可能であるか検討し、かつ、特別法によってこれらの規制がかかっていない現状について多くの司法書士が問題意識を持たなければなりません。
現在、消費者契約法や割賦販売法の改正に向けた動きが本格化していますが、消費者にとって本当に使い勝手の良い改正がされるためには、これまで消費者被害の救済に携わってきた司法書士が、その問題点に声をあげていくことが必要です。
全国の青年司法書士に、現行法の問題点について認識していただき、被害救済のための法理論を考え、何とか現状を打破していくことを目指して、本分科会を実施いたします。
■研修内容
(1) 特商法、割販法、消費者契約法の概要・基礎知識 |
(2)( 1)を用いた被害救済の事例紹介 |
(3) 現行法の問題点(法改正が議論がされている論点の紹介) |
(4) 困難事案における責任追及方法の検討 |
※この内容は、一部変更される可能性がありますので、ご了承ください。
親子関係の法制を見つめる私たちの流儀
〜生殖補助医療技術と出自を知る権利を契機として〜
担当:全国青年司法書士協議会 民法改正対策委員会
■開催趣旨
家族法は、民法制定以来、幾度かの改正を経てきましたが、親子関係法制とりわけ親子関係の確定については、制定当時と変わらず嫡出推定や認知により、判例では分娩の事実による母子関係の発生を認めているにすぎません。
戦後70年を経て、社会経済の変容や技術革新とともに、家族の姿や家族観の多様化が進んでいると言われていますが、親子関係のあり方についても例外ではありません。特に、生殖補助医療技術の進歩には目を見張るものがあります。不妊に悩むカップルの、子どもを産みたいという希望に応えてきた技術ですが、非配偶者の精子や卵子を使ったり代理出産を利用するといった医療を選択することにより、子どもの由来に夫婦以外の遺伝子を入り込ませるケースは、現在の親子関係法制では想定し ていなかったものです。立法当時に想定しないことに対応するには、やはり立法により解決すべきで、将来に向かって親子関係の規定を見直していく必要があります。
また、生殖補助医療は子どもを望む親の判断により実施されるもので、当事者たる子どもには選択の余地がなく、それだけに子どもの福祉を重視するという家族法の目的も忘れてはなりません。日本で最初の非配偶者間人工授精(AID)による子どもの出生は昭和24年とされ、現在まで1万を超える事例があると言われます。その子どもの多くは、戸籍上の父が遺伝子上の父でないことを知らされていないと言われています。また、知らされたとしても、遺伝子上の父を知るための「出自を知る権利」を認める法制度は現在の日本に存在しません。出自を知る権利は、子どものアイデンティティのみならず、親子の信頼関係確立に資すると言われています。生殖補助医療技術の進歩を契機とした親子関係法制の見直しにあたっては、子どもを持ちたいという真摯な希望に沿うことであるとともに、創られる生命の視点からも検討を進める必要があります。
私たちは、相続や成年後見の実務をはじめとして、今後ますます市民の家族問題に深く関わることが予想され、将来に向けた課題について理解を深めていくことが大切です。
■研修内容
第1部 | 生殖補助医療技術の現状について ~AIDで生まれるということ~ 講師:加藤英明先生(AIDで生まれた人の自助グループ) |
第2部 | 親子関係法制のあり方 ~生殖補助医療技術と出自を知る権利を契機に~ 講師:石井美智子先生(明治大学法学部教授) |
言いたいことが言える自由な社会に貢献する法律家としての流儀 担当:全国青年司法書士協議会 憲法委員会
■開催趣旨及び研修内容
今、日本社会において「言いたいことが自由に言えない」という危険な風潮が静かに広がりを見せています。例えば、直近では『報道ステーション』でのコメンテーターの発言を巡って報道機関の「報道の自由への圧力」が問題になっています。また、裁判という手法を使った新手の言論抑圧とも言える「スラップ訴訟」も登場しています。さらには、街頭や公共施設での表現行為についても公共施設の利用制限などの問題が生じています。言いたいことが言えなくなるところから自由というものは奪われていくものです。そして、この静かな広がりは、気を付けていなければ見逃してしまうようなわかりにくいものでもあります。「言いたいことが自由に言えない」ということは、置き換えれば憲法21条の表現の自由に対する侵害となりえます。つまり、この風潮を見逃さないようにするためには、市民それぞれが表現の自由をよく理解し、保障されるものと侵害するものとを見分けられるような憲法的視点を持っている必要があるわけです。
私たち司法書士は、法律家を自称するとともに、社会から法律家として見られるようにもなってきています。そして、法律家であるからこそ一部の法律業務に独占的に携わることが認められています。
そうであれば、私たちは法律家としての行動を社会から求められているはずです。業務を独占し、利益を得るのであれば、それに伴う責任を果たさなければなりません。
私たちは、市民の中にあってまず先に、法律家としての憲法的視点を活かし表現の自由に対する侵害行為を見抜かなければなりません。そして、見抜いた侵害行為の問題点を社会に訴えかけ、自由で生きやすい社会を守っていく責任があります。それには、私たちの中に憲法的視点があることが大前提となります。当委員会の分科会は、その憲法的視点、特に表現の自由に対する権力による侵害行為を見抜く視点、これを磨くことを目的として開催したいと考えています。具体的には、現実にあるいくつかの表現の自由侵害事例をお示ししながら、それに対する見方をお伝えすることによって、憲法的視点を磨いていきたいと考えています。基本的には学者の方もお呼びしての講義形式が中心になる予定ではありますが、できる限り会場を巻き込んだ参加型講義にしたいとも考えています。
原発事故被害者支援の流儀
〜和解仲介手続(原発ADR)の全て〜
担当:全国青年司法書士協議会 原発事故被害対応委員会
■開催趣旨
原発事故の被害を回復する賠償方法としては東京電力に直接賠償請求を行う方法、裁判を行い請求する方法、そして原子力賠償紛争解決センターに和解の仲介の申立をする方法(原発ADR)があります。
一番多くの被害者が賠償を受けている方法としては、東京電力への直接請求となっています。
しかし、加害者主導で進められている東京電力の直接賠償の基準は画一的で、被害者一人一人に必ずしも対応できていません。東京電力の基準により、直接賠償の対象外の方も多数いらっしゃいます。
また、東京電力は今年2月末、避難で失業した人の所得を補償する就労不能損害賠償を廃止し、営業損害賠償については、2016年2月までで打ち切るという案を提示しており、東京電力より直接賠償を受けていた方も、今後は訴訟や原発ADRで損害賠償を請求していく必要性が生じています。
特に、訴訟と比較すると証拠の面などで、被害者の方にとってハードルが低い原発ADRの申立のニーズが今後増えてくるものと考えられます。
そこで、当委員会では、原発ADRの活用法を検討し、それぞれの地域に避難している方々の支援をすることにより、さまざまな立場・境遇にいらっしゃる原発事故被害者の方たちの思いに気付き、既存の枠に捉われることなくことなく、何事にも取り組む法律家のさきがけとなる司法書士としての流儀を感じていただきたく、本分科会を企画いたしました。
■研修内容
原発ADRの活用を検討する上では、中間指針、総括基準、和解事例の理解が不可欠です。それらを確認したうえで、原発事故被害者の方から相談が来た場合にどの点にポイントを置いて聞き取りをすれば良いのか、原発ADRを活用した場合にどのような結果が見込まれるか、具体的な事例をもとに解説を行います。そのうえで、原発ADRを受任する際の入口となる部分から、申立て後の流れや、原発ADRの進行において必要となる情報の収集方法など、導入部分から終結までに必要な情報を網羅した 内容とします。
また、実際に原発ADRの案件を受任した司法書士の体験談やその際使用した書式などのご紹介もいたします。
原発ADRの利用を希望する被害者の方に「一緒にがんばりましょう!」と寄り添える司法書士になるために、是非当分科会にご参加ください。